Accessによる生産管理改善の進め方 - 1

T 生産管理とIT

「生産管理」と一言で言っても、その捉え方は千差万別のように思います。よく広義の生産管理や狭義の生産管理といった表現をされる場合もありますが、工場内の人や機械や物を管理する業務から、製造業の会社全体を管理するような、計画や受注から資材発注、製造、販売、また原価管理や開発、人事計画などまで含めた業務を指すこともあります。システム的には、販売管理、受注管理、購買管理、工程管理、在庫管理、品質管理、財務管理などなど、その名称は非常に多く、それらを部分的に導入している場合もあれば会社全体で非常に大きなシステムを動かしている場合もあり、生産管理のレベルもまた会社によってまちまちかもしれません。

しかしいずれにしても、ものづくりが主目的である製造業においては、生産を管理する業務というのは、それがシステム化されていようがされていまいが、また積極的に取り組んでいようが現場任せの管理をしていようが、重要であることには違いありません。そのためにムダな労力を見えないどこかでかけていることもあるかもしれませんが、どこかで誰かが判断し行動しているはずです。

生産管理という業務は、あくまでも客観的かつ間接的な生産支援に過ぎません。それなりにノウハウや経験を持った現場管理者や担当者、作業者がいれば、それなりに製造現場は動いてしまうものです。しかし一方で、そこに的を当てて業務を見直すことで、管理業務自体を効率化することができますし、直接、現場のムダを排除し工場全体さらには製造業の会社全体の改善に繋げられるものです。

また製造業の場合、何よりもその「技術」が最優先されると思います。設計面での開発技術、加工技術、要素技術、自動化技術、高度な技能者による職人技などのノウハウや独自技術がものをいう世界です。もちろんそういった技術を持たない製造業社が成り立つはずもありません。それがあってこそ受注が得られるのは当然のことです。ただ、ほとんどの場合たった一人の技能者が何から何までやることはなく、複数の作業者、ラインや設備、製造に必要な部材など、必ずどこかに「管理」という業務が存在しているはずです。さらに受注・発注・経理といった間接的業務が伴わない製造体制は考えられません。それだけ「生産を管理する業務」は重要不可欠なものです。もし少人数の会社であればそれは“面倒くさい余分な仕事”かもしれません。しかしだからこそ、その手間を軽減するための改善が必要なのではないでしょうか?。

一方、ITを利用して、各製造プロセスにおいて生産管理改善を行うことに対しては、さまざまなアプローチ方法があります。

たとえば、
  • 設計部門ではCADがあります。取引先企業から図面を電子データとしてもらうことで、部品展開や自社内の設計業務を効率化できますし、そこで得られた情報は、資材発注情報に繋げたり、CAMを介して工作機械などに送ったりすることもできます。

  • また、営業販売業務においては、見積りにおける価格の積算や見積書の作成、受注データの管理や納期に対する出荷状況の把握など、専用の販売管理システム、あるいはExcelなどのソフトが活躍します。受注に関しては、リピート性の高い得意先からはWebやEDIを介してオーダーが送られてくることもありますので、自社がそれに対応したIT化を行っておくのは必須条件となります。

  • 製造部門においては、自工場の人的能力やシフト態勢、設備能力などを勘案して、スケジューリングソフトや負荷平準化ツールなどを使ってより効率的かつ納期を順守した生産計画を立てることができますし、リードタイムの長い受注生産であればプロジェクト管理ソフトも利用価値があります。

  • その計画を元に部材を購入したり外注に手配したりする際には、MRPを使うことで、正確にかつ在庫を抑えた状態で必要な時に必要な量だけ生産準備に充てることができます。

  • 発注に基づいて部材が納品されれば、その検品や入着処理をしなければいけませんが、バーコードリーダーやICタグなどを利用してその作業を効率化することもできます。

  • 入着処理された部材に関しては、生産に必要なものが必要な数だけ揃っているか、在庫管理を行わなければなりません。そこでも、入庫点・出庫点での部材の動きをフォローし、在庫管理システムなどの在庫情報をその都度更新していくことで、厳密な現品管理を行うことができます。

  • また、実際に生産が始まれば、その進捗状況をチェックしなければなりません。工程管理のシステム、バーコードリーダーや無線I/F、あるいは現場の出来高表示器やPOP端末などを使って生産進捗の情報を収集したり、あるいはPLCなどから機械の稼働状況などの情報を収集したりすることができます。もちろん、そのデータを計画や、実際に投入されたマン・マシンの資源情報とマッチングさせることで、進捗だけでなくコスト面での実績把握や今後のための分析にも役立てることができます。

  • 図面もそうですが、作業マニュアル、品質管理マニュアル、検査報告書、設備保守マニュアル、ISOドキュメントなど、生産周辺の書類や生産準備あるいは結果として多くの書類が次々と作られていくことも少なくありません。そういった膨大なドキュメントの管理には、文書管理ソフトが有効的です。

  • 上記すべての業務をLANやVPNなどのネットワークを通じてやり取りすることで、重複したデータ管理をせず、一元的に情報管理することができます。

このように、コンピュータシステムの仕組み、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなど、製造業を支える多くの技術があることはお分かりいただけると思います。

ただ、これらを実行するのは、コストも掛かりますし、専門SEも必要となることもありますので、なかなか容易なことではありません。そこでここでは、その中でも基礎的なこととして、情報の見える化から始まって情報をデータベース化して利用するという面について、そしてそこにMicrosoft Accessを利用するメリットという面に的を絞って、生産管理改善の進め方(手順)の考え方について述べさせていただきたいと思います。


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