Accessによる生産管理改善の進め方 - 2

U 情報を見える化する

製造現場においてIT化が積極的に行われていれば、事務所の一角のモニターを見れば工場のすべての状況が把握できる、といったシステムがすでにできているかもしれません。しかし、平均的な管理下では、意外と見えないところでさまざまな情報が行き来していることも少なくありません。

たとえば、工場内の小さなショップに対して生産指示を行った場合です。他ショップの間に流れ化があったり、送り込みのタイミングや作り溜めを制御する仕組みがあったり、詳細の生産指示がなされていれば問題ないかもしれませんが、納期のみが指示されている場合、作業者自らの判断で進捗をコントロールしたり、また次工程の進捗も加味せず必要以上に作り過ぎてしまったりしているかもしれません。生産に遅れが生じた場合、管理者がそれを把握しておらず、直前になって後工程に影響を与えるような事態も起こり得るかもしれません。そのようなとき、生産指示や生産進捗の情報がそこだけで行き来し、停滞していると考えることができます。

また、元々の計画に基づいて資材発注している場合でも、すべての部材すべての業者がいつも必ずそれ通りに納品されるとは限りません。さまざまな要因によって進み遅れは起こりえますし、自工場の生産進捗によってはあえて納品の進み遅れをコントロールしなければいけないケースもあります。そのような場合、IT化が進んでいて、自工場の進捗状況がインターネットなどを介して関連先にリアルタイムで情報提供されていれば、業者自らの判断でそのようなコントロールが可能となりますが、工程の担当者が電話やFAXなどを使って、ある意味人海戦術で非定型なトラブルに対応しているとすれば、やはりそこには管理者からは見えない情報がやりとりされていることになります。しかも非効率的な手段で。

また、さまざまな得意先から受注を受けているような場合、それらが納期やリードタイム、生産順や作業者・機械の能力などを加味した上で現場に指示されているでしょうか?。ある程度受注情報がまとめられてはいるものの、工場内の資源配分は工場内任せということにはなっていないでしょうか?。そのような場合、担当者がExcelなどを利用しているか、あるいは電卓と紙とエンピツで考えているかはともかく、指示する側からは見ない状況でさまざまな情報が加工されていることはあり得ます。営業担当者にとっては指定納期に客先に納められれば文句はないところでしょうが、生産中途での進捗が隠れた状態になり、万一のときの対応をそのときになってしなければならないという事態も起こりえます。

そこでポイントです。

『紙ベースでも掲示板でもよいので、各担当者の手元や頭の中にある情報、引き出しの中にある情報を見えるところに引っ張り出しくる』

工場内のどこにどのような情報がどのような形であって、それを誰が入手・加工・排出しているか、それらがどのように繋がっているか?(あるいは隠れたままになっているか?)、その詳細を把握します。担当者へのヒアリング、業務の追跡調査などによって調べます。そしてそれらを何らかの形で管理者や他の人にも見えるようにするルールを整えます。



V 情報を電子化する

次のステップとして、紙ベースの情報を電子化します。

電子化とは、言うなれば、次のようなことです。

『ExcelでもWordもよいが、工場内のすべての情報がパソコンの中にある状態にする』

パソコンも普及し、一般的な業務ソフト(販売管理や会計ソフト)が多く出回るようになり、表計算ソフトの代名詞のようにExcelという名前が使われるようになっている昨今では、ここまではすでにやられている工場も多いかもしれませんね。ただ、表面的な部分だけにとらわれていないか、またパソコンを使うことがテクニカルな部分に走っていないか(たとえばExcelの書籍を買い込み高度なテクニックを使うことに傾注するなど)、もう一度検討してみてください。

ただ、それまで紙で運用されていた情報をパソコンに入力するのは非常に面倒です。それっきりになってしまえば、むしろムダなことになってしまうかもしれません。しかし、次のステップになりますが、データ管理をきちんと行うようにすれば将来的に非常に融通の利く情報源となりますし、電子化することによって複製、あるいはいわゆるコピー&ペーストによってデータの応用性は格段にアップします。工場内のあちらこちらに散在している情報を1台のパソコンの中に収めるということは、情報の一元化とまでは言えませんが、同じ土俵の上に持ってくることになります。移動や流用、転用など、ひとつの情報の横展開が非常に楽になります。

その際、できればファイルサーバーを用意しておくとよいでしょう。ファイルサーバーとは、社内の複数のパソコンから同時にアクセスでき、ファイルを共有できる専用コンピュータのことです。しばしばサーバーマシンと呼ばれる高価なコンピュータが必要かと思われますが、実際にはふつうのパソコンでもかまいません。サーバーと呼ばれるマシンはファイルサーバーやデータベースサーバー、メールサーバーなどさまざまな用途がありますが、ファイルサーバー限定の安価なハードウェアもあります。それを利用することで、雑然とファイルがパソコン内にあるのではなく、みんながいっしょに使えるように整理された状態でファイル類を保存しておくことができます。

なお、くれぐれも同じ情報を別々の人が別々のExcelファイルなどで作ってしまうといったようなムダは起こらないように注意します。業務改善のためにパソコンを使い、情報を電子化するのに、それ自体が余分な労力を要したり、ムダな作業となったりしてしまうと本末転倒です。

それを防ぐためにも、現在紙ベースで扱っている情報をどのように誰が電子化するか(パソコン入力するか)、多くの情報をどのような順番で電子化するか、ある意味、情報の棚卸でも行うかのごとく、その手順を計画することが重要です。もちろん、その過程で、場合にはよっては電子化しない方がよいケースもあるかもしれませんし、電子化しても再利用の可能性の低いものもあるかもしれません。また、まったく別のところで作られている情報だがひとつのExcelファイルにまとめると便利、という情報もあるかもしれません。情報自体の質や流れなどを再チェックし、要らないものは捨てるという発想も忘れずに、その対象を考えるようにします。


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